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最高裁判所第二小法廷 昭和29年(オ)194号 判決

主文

第一審並びに第二審判決を破棄する。

本件を東京地方裁判所に差し戻す。

理由

上告代理人弁護士山中静次の上告理由について。

被上告人が訴外小竹新六、同斉藤弥太郎、同小林三雄等に対してなした換地予定地の指定通知は、右訴外人等が従前の上告人の所有土地に賃借権を有するものであるとの事実の前提の下になされたものであるといわなければならない。そして換地予定地指定の効力によつて、被上告人は訴外人等が従前の土地上に所有する建物を換地予定地上に移築すべきことを命じ、又は、代執行によつて移築することもできるのであるから、仮りに上告人主張のとおり右訴外人等は従前の土地に対し何等賃借権を有するものでないとするならば、上告人は右指定通知の効力によつて、換地予定地に対し従前の土地に対する完全な所有権者としての権利の行使を妨げられる結果を招く恐れがあるものであり(訴外人等が従前の土地に賃借権を有した者でない場合又は指定通知が適法のものでないならば、移築命令又は移築代執行は違法であり、この場合上告人は訴訟をもつて争うことができるけれども、移築命令又は代執行の着手までこれを待たなければならない理由がない)、従つて上告人は本訴において右訴外人等に対する被上告人のなした指定通知の取消を求める法律上の利益を有するものといわなければならない。しかるに第一審判決が訴外人等が換地予定地上に従前と同様の権利があるかないかは上告人と訴外人等との間で決せられる問題であり、この権利関係は被上告人の本件指定通知によつて何等の消長を来すものではないからといつて、直ちに上告人(原告)の本訴請求は権利保護の利益を欠くものとして上告人のこの点の請求を却下し、原審また右第一審判決を是認して上告人(控訴人)の控訴を棄却したのは何れも法令の解釈を誤つた違法あるものといわなければならない。論旨は理由があり、第一、二審判決はこの点において既に破棄を免れない。よつて爾余の論旨に対する判断を省略し、さらに本件指定定通知の適否を審理するため、民訴三九六条、三八八条、三八九条に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)

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